お婆ちゃんと猫








僕が、初めてお婆ちゃんと会ったのは、小6の夏休みも後半に近い

暑い日の事でした。

僕の家の近所に大きな公園があり、皆はそこの公園を

「えんぴつ公園」と呼んでいました。

何でかと言うと、公園の中にえんぴつを型どったポールが4本建ってるからです。

その、えんぴつ公園で出会ったのでした。

僕は、友達と会う約束をしていたので、けやきの下で友達を待っていました。

約束の時間より、少し早く着いた僕は、あんまり暑かったので

自販にジュースを買いに行こうとした時に、そのお婆ちゃんに声をかけられました。

「ちょっと、坊や。お願いがあるんだけどね?」

「あの猫ちゃんを、ちょっと見ててほしいんだけどいいかい?」

と言いながらベンチの方を指差して僕に言いました。

「あのね、坊や、あそこに猫がいるの見えるかい?」

「あたしの愛猫のミミっていうんだよ」(o≧▽゚)o

「あぁ〜。そんな事はどうでもいいんだけね」

「家に忘れ物して来ちゃってね。」

「その間、ちょっと、あの子を見ててもらえるかね?」

「直ぐに戻るよ!」

その、お婆ちゃんが、あまりにもあっさり言うので

僕は、迷わず「ハイ!」と答えていた。

前に、僕の家にも猫がいました。

キジとらのオス猫でした。

だけど、僕が小学校に入学する頃、急に家に帰って来なくなりました。

家族で、いろいろ探したけど見つからず

何処かでケガでもして倒れてるんじゃないかと心配してたら

なんと、よその家で飼われてたという、浮気者の猫でした

あんなに可愛がってあげたのに。

僕には、理解出来ず、それ以来、猫がちょっと嫌いになっていました。

なので、猫に接近するのは6年ぶりって事になります。

そのお婆ちゃんは、忘れ物を取りに出かけて行きました。

ちょっと、緊張気味に猫の方に近づいて行く僕でした。

すると、ベンチに、タオルを敷いてもらって、静に寝ている様子でした。

僕が来た事に気づいたのか?

猫は、即座に顔を上げ、僕の事をじっと見てました。

「大丈夫だよ! 怖くないからさ」

「ちょっと、君を見ていてって、頼まれたんだよ。」

「君の、お婆ちゃんって、優しそうな人だね」

「そうとう可愛がってもらってるんだね?」

そう言うと、猫の方も、「当たり前じゃない」とでも言うような顔をしてました。

「名前、ミミちゃんって言うんだね?」

「女の子だよね?」

「お婆ちゃんが付けてくれたの?」

「僕んちにも、いたんだ。猫がさ」

「もう〜昔の事だけどね」

「ちょっと嫌な思い出になっちゃってさ」

「それ以来、猫から、ちょっと遠ざかっていたのかも?」

「だけど、君を見てると、何かまた猫が好きになりそうだね」

「ねぇ、ちょっと触ってもいい?」

「怒らないでよ。怖くないからね!」

僕は、そっとミミちゃんの頭を撫ぜて見ました。

久々に触れる猫の毛の感触でした。

以外にも、ミミちゃんは喉をゴロゴロ鳴らしてくれました。

僕の顔もほころんできました。

「やっぱ、可愛いな猫は」なんて思ったりして。

ミミちゃんは、いつまでも同じ姿勢で大人しくしていました。

「あぁ〜、坊や。有難うね!」

お婆ちゃんが小走りに公園側に入って来ました。

「助かったよ。しかし、今日は暑いねぇ〜。」

「坊や、ミミちゃんを見ててくれたお礼だよ」

「はい、どうぞ!」

お婆ちゃんは、僕にアイスを買って来てくれました。

「えっ? いいんですか?」

「いいのよ。遠慮しないで食べてね!」

「あらら、坊や。 お友達が呼んでるよ!」

そうだった。僕、友達と約束してたんだ。

僕は、お婆ちゃんにお礼を言って、その場を離れました。

だけど、不思議だな?

あのミミちゃん、全然体を動かす事なかったし。

僕が初めて触ったのに、怒らなかったし。

まぁ、いいか。

あんまり深く考えるのは止めよう。

「ごめん。ごめん。」

「何やってたんだよ?」

「あのさ、ちょっと猫を見ててって頼まれたんだよ。」

「えっ? 猫?」

「うん。さっきの、お婆ちゃんにさ」

「それがさ、何か不思議なんだよな?」

「何がだよ?」

「う〜ん・・・・・・・?」

「な、それより早く行こうよ!」」

「あっ、そうだ、そうだ。行こう。」

僕達は、ここで待ち合わせて、明日から臨海学校に持って行く

お菓子などを買いに行くところでした。

お小遣い一人3000円と決まってました。

「なぁ、 うちの、お母さんが言ってたよ。」

「お小遣い、余分に持って行きなさい」ってさ。

「そんなのダメだよ。ちゃんと守らないと?」

僕は、わりと真面目な方だったので友達の言う事に賛成出来ないでいました。

「さっき、言ってた不思議な事って何?」

「えっ? あぁ〜。 何でもないよ!」

僕は、さっきの猫の事は友達には話さないでいました。

そして、2泊3日の臨海学校も終わり、僕は夏休みの宿題の残りに精を出していました。

そんな、ある日の午後、僕はお母さんから買い物を頼まれ、近くのスーパーに出かけました。

空は、真っ暗になり、今にも夕立でも、きそうな感じでした。

僕は、買い物を早々に済ませて、ちょっと急ぎ足で帰ろうとした時の事です。

あの、お婆ちゃんに出会ったのでした。

「おや? 坊や!」  

「この間は、有難うよ!」

「何か変な雲になって来たね?」

僕は、お婆ちゃんに、また会えた事が、なんか嬉しく感じました。

「あの〜? ミミちゃんは?」

「あぁ〜。ここだよ!」

お婆ちゃんは、そう言って右手に下げているケージに目をやりました。

僕は、ここでも、やっぱり不思議に思いました。

ミミちゃんの事です。

何で、いつもゲージに入ってるんだろう?

  猫なのに何で?

「あたしもね、買い物に出て来たんだけどね、一雨きそうだからね。」

「公園には寄らないで帰ろうとしてたところだよ!」

「坊やは?」

「あっ、僕はスーパーに行った帰りです。」

「買い物を頼まれたんで」

「そう。 お母さんのお手伝いだね? 偉いね。男の子なのに」

お婆ちゃんは、そう言うとニッコリ笑って僕を見てました。

ゲージに入ってるミミちゃんは相変わらず大人しくしてました。

そんな時、やっぱり降って来ました雨が。

「ほらほら。降って来ちゃったね。急がなくちゃ!」

「じゃ、坊やも気をつけて帰るんだよ!」

僕は、お天気がこんなんじゃなかったら、もっと、お婆ちゃんと一緒にいたかったと思いました。

そして、ミミちゃんの事を、ちょっと聞いてみようかと?

お婆ちゃんと僕は、信号のところで別れました。

家に着く間、また会えるかな?

あの公園に行けば、お婆ちゃんは来てるのかな?

なんて、思いながら帰りました。

「お母さん、買って来たよ!」

「あら、降られちゃったね。ごめんね!」

「風邪、ひくからシャワー浴びなさいね!」

「うん。 あのね、お母さん!」

「えんぴつ公園あるじゃない。 あそこにね」と言い掛けた僕は話しを途中でやめてしまいました。

「えっ? えんぴつ公園がどうかした?」

「う〜ん。何でもないよ!僕の勘違いだったよ。」

そう言って、僕はシャワーを浴びにお風呂場に。

今度、会ったら聞いてみよう必ず。

夏休みの宿題も、追い込みにかかってました。

僕の苦手な作文でした。

いつもなら、読書感想文を書くのですが今年は、テーマは決まってなく

自由作文という事になっていました。

と言われても、特に書く事もなく。

考えただけでも、気が重くなっていました。

それがこの先に思いも寄らない事に進んで行こうとは?

僕にも想像がつきませんでした。

あの、お婆ちゃんの存在も僕にとっては何か懐かしいものがありました。

僕には、お父さん方の、お婆ちゃんがいましたが2年前に病気で亡くなりました。

お母さん方の、お婆ちゃんは、僕が生まれる前に、もう天国に行ってしまってました。

僕は、一人っ子のせいか、お婆ちゃんっ子でした。

僕の、お婆ちゃんは、岡山で一人暮らしをしてました。

夏休みになると、決まって、両親と、お婆ちゃんのところに遊びに行ってました。

その代わり、冬休みには、お婆ちゃんが、僕の家に来て

お正月が終るまで一緒に過ごすのが決まりになっていました。

僕にとって、どちらも、待ち遠しい事でした。

こんな事がありました。

僕が8歳の夏休みの事です。

その年は、お父さんの仕事の都合で急に、お婆ちゃんのところに、遊びに行く事が出来なくなりました。

お母さんが、僕に何度も行けなくなった理由を聞かせているのに僕は

それを聞き入れず、すねてばかり。

そうとう両親を困らせたそうです。

「僕、一人で行くからいいよ!」なんて泣きながら言ってたことを今でも何となく覚えいてます。

僕は、お婆ちゃんの笑顔がとっても好きでした。

「何で、僕は、お婆ちゃんの子供で生まれて来なかったんだろう?」なんて

意味の解らない事を思ったものです。

その笑顔が、どこか似ているのでした。

ミミちゃんの、お婆ちゃんと。

何か、幼かった頃を取り戻してるかのように思えて。

シャワーを浴び終えた僕は、机に向かい仕方なく苦手な作文のテーマを考えていました。

そんな時、TELがかかって来ました。

「もしもし。 うん。 今からやろうと思ってたとこだよ!」

あの時、えんぴつ公園で待ち合わせた友達からでした。

「えっ? まだ決まってないけどさ。」

「自由作文より、まだ読書感想文の方がましだよな?」と友達。

「ほんとだよな。 これさえ出来上がれば夏休みの宿題は終わりなのにさ」

「あっ、それで、明日会える?」と友達。

「うん、いいよ! 何時ごろ?」

「じゃね、2時ごろ大丈夫?」と友達。

「うん。解ったよ! で、何処にする場所?」

「え〜とね?  じゃ、えんぴつ公園にする?」と友達。

「うん。いいよ!いいよ!」

TELを切った僕の顔がほころびました。

もし、又、お婆ちゃんとミミちゃんに会えたなら決まりだ!

と僕は思いました。

作文のテーマが決まったような気がしました。

そう思うと、明日は絶対に会いたいなんて思っちゃって。

そして、ミミちゃんの不思議な事も、思い切って聞いちゃおうと。

外は、すっかり雨も上がり暑そうでした。

その日、時間より早めに、えんぴつ公園に来てました。

そして、真っ先にベンチのある方を見回してみました。

どこにも、お婆ちゃんの姿は見つかりませんでした。

「そうだよな。毎日来てるって決まってるわけじゃないもんな?」

「時間だって、決まってるわけじゃないし?」

なんて、思いながら友達を待っていました。

20分ぐらいしてから、友達はやって来ました。

「いやぁ〜。 今日も暑いよ〜。」

「そうだな。夏休み、あと10日ぐらいあるといいのにね?」

「ほんとだよな。 あとは冬休みを待つだけだね(笑)」

なんて、冗談を言いながら、僕達は公園を歩いていました。

「ねぇ、後で僕んちによらない?」

「ちょっと見せたいものがあるんだ!」

「結構、自信作なんだけどさ」

「この夏休み中、宿題も終ってないのに、それに夢中になってたんだ!」

友達は、船が好きで、今までにもいろんな模型を作っては僕に見せてくれました。

好きだけあって、とっても上手く作ってありました。

僕は、細かい作業が苦手な方なので、いつも羨ましいと思っていました。

「ふ〜ん。 それは楽しみだな。」

そう言うと、友達が急に思いついたように僕に言いました。

「この暑さだよ。ねぇ、ちょっと遊んで行こうよ。」

「と言うことは、プールって事?」

「そう。そう。 この時間はあんまり混んでないと思うからさ?」

プールは、えんぴつ公園の裏にあってこの時期、小学生は無料で入れてくれていました。

「うん。いいよ!」

「そんな事もあるかなって思ってたよ!」

「この暑さだもんね! だから持って来たよ海パンを」

げらげら o(^▽^)o げらげら

「用意いいね!」ヾ(@^▽^@)ノわはは

「じゃ、行こうか!」

「うん!」

そう言いながら、僕達は公園を出ようとした時でした。

向こうから、ゲージを下げた、お婆ちゃんの姿が目に入りました。

「あっ! お婆ちゃんだ。」

僕は、思わず大きな声をだしていました。

「あれ? この間の、お婆ちゃん? 猫の?」

「うん。そうだよ!」

「ねぇ、お婆ちゃんに何か用があるんじゃないの?」

「なんならさ、プール行くの止めてもいいけど?」

「ううん。 大丈夫だよ!」

「そう。ならいいけどさ。」

僕は、ちょっと残念な気持ちになっていましたが

また、この次に期待して、今日はプールに行く事にしました。

約一時間ぐらい僕達はプールで遊んでいました。

「じゃ、僕んちに行こう。」

「うん。 そうだね。 楽しみだな!」

「(*'-'*)エヘヘ でも、そんなに期待しないでよ!」

僕は、友達が作った船の模型を見せてもらい30分ぐらい、お喋りをして

友達の家を出ました。

帰り道、えんぴつ公園の中を通って行きました。

まさか、こんな時間まで、お婆ちゃんがいるはずはないと思いながら?

「そうだよな。 いるはずがないよ?」

「又、明日来てみようかな?」

「早くしないと、作文に間に合わないもんな」

そんな事を考えながら、僕は歩いていました。

そんな時、「坊や! ねぇ、坊や!」

と、ちょっと距離が離れたところから、声が聞こえて来ました。

「あっ? お婆ちゃん?」

「うそ? そんな事ないよね?」

と疑いながら、声の方に目をやると、なんと、お婆ちゃんでした!

「お婆ちゃ〜〜ん!」

「そんなに急がなくてもいいですよ!」

「僕が、そっちに行きますから。」

そう言って僕は、急ぎ足で、お婆ちゃんのいるところに向かいました。

やっぱり、えんぴつ公園に寄って良かった。

神様に感謝。(o^∇^o)

「いやぁ〜。 坊や。 悪いね。 急がせてしまったね!」

「今日も、暑いねぇ。 年寄りには、この暑さは厳しいわね」

「はい。 僕も、今まで、友達とプールで遊んでいました!」

「そうかい。 この暑さだもの。 プールは、いい遊び場だわね」

お婆ちゃんは、いつものニッコリ顔で、僕に言いました。

「今日はね、ミミをね、病院に連れて行ったんだよ。」

「昨日から、何か元気がないんだよね!」

「食欲もないみたいだしね。」

「心配でね。 」

「で、ミミちゃんは、大丈夫なんですか?」

「それがね、先生に診てもらったらね、どうもお腹に虫がいたらしいんだよ。」

「えっ? 虫が?」

「そう。寄生虫だよ。」

「でも、お薬をもらって来たから、それを飲ませれば自然と出るらしいのよ。」

「心配ないって言われたんで、ひと安心したよ。」

「あぁ〜。良かった!」

「悪い病気じゃなくて。」

「ありがとよ! 坊やは本当に優しい子だね。」

僕は、今だと思いました。

聞いてみよう? ミミちゃんの事を?

「あの〜。 お婆ちゃん。 僕、前から聞きたい事があったんです。」

「ミミちゃんの事なんですけど・」

「おや。 ミミの事で?」

「何でも、聞いておくれ。」

「坊やと、お話しするのは、あたしには楽しい時間だからね」 ニコ(*^_^*)ニコ

「それで、何が聞きたいの? 坊や。」

「あの〜。 ミミちゃんがいつもゲージの中で、大人しくしてるし」

「いつも同じ姿勢でいるから、ちょっと不思議に思ってました」

そこまで、僕が言うと、お婆ちゃんは、うなづきながら僕に言いました。

「やっぱり、そうかい?」

「確かにね!」

「ミミとの出会いはね、今から2年半ぐらい前の事になるかね?」

「寒い日だったと思うわ?」

「その日は、入院していた、おじいちゃんのところに洗濯物を届けに行ったんだよ。」

「病院には、そうだね、一時間ぐらいいたかしらね?」

「おじいちゃんは、もう何年も前からね、持病があって入退院を繰り返していたんだよ。」

「寒い時期は特に良くなくてね」

「あれ? 話しがそれてしまったね?」

「でね、病院を出たところで、バッタリ知り合いに声をかけられてね。」

「何年ぶりかに会った人だったんだよ。」

「で、すっかり長話をしちゃってね」

「これは、大変! 帰りのバスの時間に乗り遅れるわ。」

「と思い、あたしは、バス停まで、急いだよ!」

「普段は、めったに急ぐなんて事はしない、あたしなのに、そん時ばかりわね・・・・」

「その時だよ! 自転車に乗った少年が猛スピードで、こっちにやって来たんだよ。」

「あっ! 危ない!と思った時には、もう、その少年は、あたしをめがけるように・・・・」

「あたしは、もうダメだ!と思ったよ。」

「避ける事も出来ず、足がすくんでしまってね。」

「もう〜ぶっかる。ぶっかる。と思いドキドキして。」

「あぁ〜。 お願い! 止まって! 止まって!」

「周りに居合せた人達も、止まれ〜! 止まれ〜!。」

「と言ってくれてた事を覚えてるよ!」

「ちょうど。その時だよ!」

「猫が急に、あたしの足元から飛び出して来てね。」

「その瞬間、あたしは、その猫につまずき転倒してしまったんだよ。」

「でも、そのお陰でね、少年の自転車から遠ざかる事が出来たんだよ。」

「あたしは、怪我っていっても、かすり傷程度で済んでね。」

「だけど、その代わり、飛び出して来た猫の方が少年の自転車に、まともにぶっかってしまったんだよ。」

「猫は、血まれになって横たわったまま、動かないんだよ」

「あたしは、とっさに、周りにいる人達に大声で言ったよ!」

「誰か、お願いよ! この猫を病院に連れて行って。お願い!」と。

「転倒した、あたしは直ぐには起き上がる事が出来ないでいたんだよ。」

「周りにいた人にも、優しい人がいてね」

「タクシーを止めて、猫を抱いて病院に。」

「その猫ちゃんがミミちゃんだったんですね?」

「それで、ミミちゃんは・・・・・・?」

「病院に連れて行ってくれた人から聞かされて、どうも、ぶっかった時に腰を強くやられたらしいって?」

「暫くは、入院しなくてはいけないと聞かされてね」

「でね、あたしも、気になってね。病院に猫の様子を見に行ったんだよ」

「だって、あの猫のお陰で、あたしは大事に至らなかったんだからね。」

「あの猫に申し訳なくてさ!」

「先生が言うには、今から直ぐに手術をしなければいけない状態と言うんだよ。」

「あたしは、迷わず言ったよ!先生に」

「お願いします!どうか助けて下さいって。」

「だけど、最悪の場合は、後ろ足がマヒしてしまい歩く事は困難だと先生は言うんだよ」

「その時だよ。あたしは決めたんだよ。」

「もし、この猫が歩く事が出来なくなった、この猫の面倒は、あたしが一生見ようってね。」

「申し訳ないと言う、あたしの気持ちからね。」

「結局、手術の結果、先生が言ってた通り、猫は、もう歩く事が出来ないと。」

「猫はね、約10日間の入院生活を終えて退院出来る事になったんだよ。」

「近所の人が言うには、その猫は、どうやら野良猫らしい?」と聞かされてね。

「じゃ、なおさら面倒を見てあげないと可愛そうだと思ったのさ。」

「それからだよ。あたしとミミとの生活が始まったって訳だよ!」

「もう、これで、坊やが不思議と思ってたことは解決しただろう?」

「だけどね、退院後のミミとの暮らしは、思った以上に大変だったよ。」

「ミミだって、今まで自由に歩けていたのが急に歩けなくなっちゃったんだからね」

「そりゃ、辛い葛藤が暫く続いたよね。」

「この頃が、ミミにとっても、あたしにとっても、一番辛い時期だったんじゃないかね?」

「だけど、賢いミミは、そんな辛い時期を見事に乗り越えたんだよ。」

お婆ちゃんの話しを聞いてるうちに、僕は思いました。

ミミちゃんの精神の強さと、ミミちゃんにかける、お婆ちゃんの心の優しさを。

もう、この瞬間、僕は決めていました。

この心温まる、この話しを自由作文に書こうと。

おわり



d(o⌒∇⌒o)b 最後まで読んで頂いて有難うございました。